施工管理技士の「工事成績評定」攻略法!高得点を生むプロセスとは?

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2025-12-15建設情報コラム

施工管理技士の「工事成績評定」攻略法!高得点を生むプロセスとは?
現役の施工管理技士であるあなたは、日々の現場管理で多大な責任を負っています。その努力の結果として、公共工事の「工事成績評定点」(通称、工事の通知表)が決定されるのです。この評定点が、あなたの企業、そしてあなた自身のキャリアを大きく左右することを、実感されている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、この評定点がどのようなプロセスを経て決定され、具体的に何が評価の対象となるのかを、発注者支援業務(公共工事の発注者をサポートする仕事)の視点から深く掘り下げていきます。この仕組みを深く理解することこそが、施工管理技士として評価を高めるための、そして評価を支える側へキャリアアップするための、決定的な戦略となるでしょう。
1級土木施工管理技士の資格取得がもたらす具体的な利点に関しての詳細はこちらの記事をご覧ください。

工事の通知表「工事成績評定点」とは?

今日の建設業界では、公共工事の品質を確実に確保すること、そして将来にわたってその担い手となる技術者を中長期的に育成・確保することが、喫緊の課題とされています。
国土交通省の直轄工事では、この品質確保の目標を達成するため、総合評価落札方式の適用が推進されています。令和4年度の実績を見ると、その適用率は件数ベースで実に99.8%に達しており、ほぼ全ての公共工事で、入札時に企業の技術力が厳しく評価されているのが現状です。

この方式の下で、企業の技術力を数値化し、落札者の決定において極めて重要な指標となるのが、この「工事成績評定点」なのです。

評定は、単に工事の出来栄えを評価するだけでなく、工事の適正かつ能率的な施工を確保し、ひいては工事に関する技術水準の向上を図ることを目的として実施されています。
工事成績評定点のチェックリスト

検査プロセスを解剖!「施工体制」「安全」「出来形」はどうチェックされる?

現場の施工管理技士にとって、発注者側の検査がいつ、どのように実施されるのかを知っておくことは必須の知識です。検査は、私たちが思う以上に厳密なプロセスに基づいて行われています。

検査は二種類ある:給付の検査と技術検査

一つ目は、会計法に基づく「給付の完了の確認」に必要な給付の検査です。これは、契約通りのものが完成したかを確認する、一般的な完成検査に近いです。

そして二つ目が、品確法(公共工事の品質確保の促進に関する法律)に基づく「技術水準の向上に資するため」に必要な技術検査です。

私たちが注目している工事成績評定は、この技術検査の一環として実施されるものです。主に技術検査官と、監督職員が充てられる技術評価官によって行われます。
現場で特に重点的にチェックされるのが、以下の「施工プロセス」の主要項目です。これらは、現場の施工管理技士の皆さんが日頃から最も注力すべき業務と言えます。

施工管理技士が問われる「施工体制」の適正化

公共工事では、契約金額に応じて、技術者の配置義務が定められています。特に厳しくチェックされるのが、技術者の専任・常駐の確認です。
専任・常駐の確認
請負代金額が4,000万円以上(建築一式工事の場合は8,000万円以上)の公共工事では、監理技術者または主任技術者の専任が義務付けられています。監督職員は、配置予定技術者が契約後に通知された技術者と同一人物であるか、そして元請会社に所属しているかを確認するために、監理技術者資格者証の提示を求めます。
書類の整備と掲示
下請契約を締結した場合、受注者(元請)は施工体制台帳を作成し、その写しを発注者に提出する義務があります。また、現場においては、施工体系図を工事関係者や一般の方の見やすい場所に掲示しているかどうかも点検されます。
これらの施工体制に関する義務を怠ると、後述する法令遵守の項目で減点対象となるだけでなく、重い処分につながる可能性があります。
施工計画書の作成の流れと必要なスキルに関しての詳細はこちらの記事をご覧ください。

安全対策と出来形・品質管理のチェックポイント

「施工プロセス」において、現場の安全と品質の確保は、評定の核となる項目です。
安全対策の実行(安全活動の記録)
安全は、労働安全衛生法(安衛法)に基づく事業者責任であり、評定ではその活動が記録されているかがチェックされます。具体的には、「施工プロセス」のチェックリストに基づき、以下の記録があるかを確認されます。
  • 災害防止協議会
  • 安全教育や訓練(半日/月以上)の実施
  • 新規入場者教育
法令遵守
安全面以外でも、法令違反は厳しくチェックされます。過積載防止への取り組みや、労働安全衛生法に基づく使用機械の点検整備、保安施設の設置管理などが細かく見られます。法令違反が確認された場合は、「法令遵守等」の項目で明確に減点措置が適用されるのです。
出来形・品質の確保(管理図の確認)
日常的な出来形管理および品質管理が、設計図書と施工計画書に基づき、適時かつ的確に行われているか、書類によって確認されます。確認の証拠となるのは、出来形管理図表や品質管理図表といった書面です。これらが正確に記録され、管理のプロセスが可視化されていることが重要になります。
また、完成検査時に確認できない不可視部分(例えば、埋め戻し前や構造物の内部など)については、中間技術検査や、監督職員による段階確認(立会)が、施工の節目で実施されることになっています。
施工管理が品質確保のプロセスを確認する

施工管理技士が見るべきポイントvs発注者支援員が見るべきポイント

公共工事の品質確保という最終目標は共通していますが、施工管理技士(実行者)と発注者支援員(評価・監督者)は、それぞれ異なる視点から工事を捉え、異なる業務上の責務を負っています。

この二つの視点を理解することで、評価される側(施工者側)が「何を求められているか」を正確に把握できるようになります。

実行者としての施工管理技士の責務(実行者視点)

施工管理技士の皆さんは、現場の最前線で「自主施工の原則」に基づき、以下のポイントを重視して業務を遂行します。
項目 施工管理技士が見るべきポイント
契約履行 設計図書に従い、自らの責任で施工方法を決定し、その通りに実行する。
品質 出来形・品質管理基準に基づき、材料、施工プロセス、寸法精度を厳密に管理する。
コスト/利潤 予定価格(積算基準)を参考に、適正な利潤を確保しつつ、施工効率を最大化する。
責任 労働安全衛生法に基づき安全衛生面を確保。事故や粗雑工事を未然に防ぐ。
技術力 施工難易度への対応、創意工夫、新技術導入によって技術水準を高める。
つまり、施工管理技士は、現場を円滑に回しつつ、設計図書を完璧に実現し、加えて会社の利潤と労働者の安全を守るという、多岐にわたる業務を担っているのです。

評価・監督者としての発注者支援員の視点(評価・監督視点)

一方、発注者支援業務を担う監督職員(技術評価官)は、納税者の財産である公共工事が、適正に執行されているかを確認し、評価するプロセスを支えます。
項目 発注者支援員が見るべきポイント
契約履行 契約が適切に履行されるよう、指示、承諾、協議、調整などのプロセス全体を確認する。
品質 出来形・品質が契約図書に適合しているか検査し、施工状況を技術的観点から確認・評価する。
コスト/利潤 積算内容が市場の労務費・法定福利費を反映しているか確認。不当な値引き(歩切り)を避け、ダンピング防止策を適用する。
責任 予算執行職員等の責任に関する法律(予責法)に基づき、監督・検査の職務を適正に執行する責任を負う。
技術力 公平な工事成績評定を行い、その結果を反映することで、請負業者の技術力評価・育成につなげる。
発注者支援員(監督職員)は、施工者が適切に業務を遂行しているかを確認するだけでなく、適正な価格で契約が履行されているか、そして評価が将来の技術指導育成につながるか、という公共的な視点を持っているのです。
発注者支援業務と施工管理の役割や仕事内容の根本的な違いに関しての詳細はこちらの記事をご覧ください。
施工管理技士と発注者側で見る視点が異なることを示唆する画像

高得点獲得のカギは「創意工夫」と「プロセス」の文書化

工事成績評定において、高得点(一般的に優良企業認定の目安は80点以上)を獲得するためには、単にミスなく施工を完了させるだけでなく、戦略的なアプローチが必要です。評定は基本点である65点から加点・減点される構造になっています。

減点回避は「法令遵守」の徹底から

高得点の第一歩は、減点項目を徹底的に回避することです。

特に「法令遵守等」は減点評価のみの考査項目であり、ここでミスを犯すと点数を挽回するのは非常に難しくなります。

具体的に避けるべき減点要素には、以下の建設業法違反や重大事故があります。
  • 一括下請負の禁止
  • 技術者専任義務の違反
  • 重大事故の発生
これらの違反や事故が発生した場合、企業は指名停止などの厳しい措置が取られることになります。先に述べたように、施工体制台帳の整備や、監理技術者の専任確保は、法令遵守の基本中の基本として、厳格に守らなければなりません。

加点最大化は「創意工夫」と「新技術」活用

減点を回避し、65点を確保したら、次は加点項目を最大化する戦略が必要です。工事成績評定の「創意工夫」および「社会性等」の項目は、技術水準の向上に積極的に取り組む姿勢を評価するために設けられています。

加点の具体的なポイントは以下の通りです。
  • 技術的な工夫:施工や品質向上に関する工夫、または特殊な工法や材料の使用が評価対象となります。
  • 新技術の活用:NETIS(新技術情報提供システム)に登録された新技術を積極的に活用することは、明確な加点対象です。特に、起工測量から電子納品までの全ての段階でICTを活用した工事(ICT活用工事)を実施した場合、最大2点の加点が見込めます。
  • 働き方改革:近年重視されているのが「担い手確保」に向けた取り組みです。週休2日(4週8休以上)の確保に向けた取り組みや、若手・女性技術者の登用なども、社会性等の項目で加点対象となります。
これらの加点業務は、単なる施工技術だけでなく、業界の未来を見据えた積極的な取り組みが、最終的な「通知表」に反映されることを意味しています。DX時代に発注者支援業務で求められる新たなスキルやキャリア戦略に関しての詳細はこちらの記事をご覧ください。

評定の鍵を握る「プロセス」の文書化の重要性

現場でどんなに優れた創意工夫を凝らしても、それが発注者側に正確に伝わり、評価プロセスに乗らなければ点数には結びつきません。

評定者は、提出された施工計画書や各種管理資料、そして「施工プロセス」のチェックリストを基に評価を行います。

ここで重要なのは、評価の対象となるのは、事前に監督職員と協議した作成書類のみであるという点です。工事関係書類一覧表に記載される書類以外は、評価の対象外となるのです。

したがって、施工管理技士として高得点を目指すならば、以下の手順を徹底することが不可欠です。
  • 施工計画段階:創意工夫や新技術の活用計画を明確に文書化し、施工計画書に盛り込む。
  • 事前協議:計画書や、評価対象としたい管理資料について、発注者との事前の取り決めを必ず行う。
  • 実行と記録:計画通りに実行したプロセスを、出来形管理図表や品質管理図表といった書面で適時かつ的確に記録する。
「高得点獲得のカギは、実行力と、その実行プロセスを文書化する管理力にある」と言えるでしょう。
評価で満点だった施工管理の女性

評価の仕組みを知るあなただからこそ、発注者支援業務で輝ける

公共工事において高い評価(平均点80点以上など)を得ることは、企業(請負業者)の競争力向上に直結します。優良な施工実績を持つ企業は、入札時の加点や、中間技術検査の実施回数の減免といった優遇措置を受けることができます。

つまり、工事成績評定のプロセスを理解し、高得点を獲得する業務を遂行することは、施工管理技士としてのキャリアにおいて、極めて価値のある経験なのです。

評価の仕組みを知る専門家としてのキャリアパス

あなたが培ってきた「現場での施工技術や管理能力」に加え、「工事成績評定の仕組み」、すなわち発注者側がどのような検査・評価のプロセスを経ているかを深く理解していることは、大きな強みとなります。

この知識と経験は、発注者支援業務(公共工事の発注者を技術的にサポートする業務)において、即戦力となる資質そのものだからです。
発注者支援業務では、国や地方公共団体の立場から、以下の発注関係事務を適切に実施する役割を担います。
  • 積算(予定価格の設定)
  • 監督・検査
  • 技術提案の審査
現場の課題を熟知し、品質確保に必要な要件、特に「施工体制」「安全」「出来形」のチェックポイントを正確に把握している施工管理技士は、発注者支援業務にとって欠かせない人材です。
評価の仕組みを知って満足のいく仕事をしている施工管理の男性

まとめ:現場から評価を支える側へのキャリア転換

あなたが現場で奮闘し、「どうすれば評価されるか」を追求してきた視点は、発注者側から見た「どうすれば適正に評価し、品質を確保できるか」という視点に、非常にスムーズに転換可能です。
工事成績評定で高得点を取るには、「減点を避ける」ことと「加点を増やす」こと、そして「やったことを伝える」ことが重要です。
この3つの視点で、現場で何をすべきかをまとめて見てみましょう。
工事成績評定「高得点」攻略法
評価の柱 攻略ポイント(現場でやること) 具体的なアクション例
1. 減点回避(法令遵守) 法律やルールを完璧に守る!
  • 技術者の専任・常駐を遵守し、資格者証を常時提示できるよう準備する。
  • 施工体制台帳を正確に作成し、期限内に提出する。
  • 一括下請負(丸投げ)を絶対に行わない。
2. 加点最大化(技術力) 「より良い工夫」を積極的に行う!
  • NETIS登録の新技術・新工法を積極的に採用する。
  • 週休2日など働き方改革の取り組みを記録し、資料として残す。
  • 難易度の高い施工で創意工夫を実施し、エビデンスとしてまとめる。
3. プロセスの可視化(管理力) やったことを全部「証拠」として残す!
  • 創意工夫や新技術の計画を、施工計画書にしっかり記載する。
  • 出来形・品質管理のデータを正確に取り、管理プロセスを見える化する。
  • 評価対象としたい書類は、事前に発注者と協議して合意しておく。
この発注者支援業務へのキャリアチェンジは、あなたが培った知識と経験が、公共工事の品質確保を根底から支えるという、より広範な業務で、キャリアを飛躍させるための確かな基盤となり、自身の豊かな時間を取り戻す手助けにもなるでしょう。
施工管理から「家族との時間」を取り戻す転職に関しての詳細はこちらの記事をご覧ください。

現場のプロセスを熟知しているあなただからこそ、発注者支援業務という舞台で、その専門性を存分に発揮し、輝くことができるはずです。ぜひ、新たなキャリアへの一歩を踏み出してみませんか。

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